メルマガ【2016年10月号】目次
今回のメルマガ①【2016年10月号】個人情報保護法改正(その2)
1.「個人情報保護法改正(その2)」
平成27年9月に個人情報保護法が改正されました。主な改正のポイントは次のとおりです。
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ア 定義の明確化等
イ 適切な規律の下で個人情報等の有用性を確保
ウ 個人情報の流通の適正さを確保
エ 個人情報保護委員会の新設及びその権限
オ 個人情報の取扱いのグローバル化
カ 請求権
(首相官邸ホームページhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pd/pdf/gaiyou.pdf)
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個人情報保護法改正の重要なポイントのうち、今回は、上記の「イ 適切な規律の下で個人情報等の有用性を確保」についてご紹介します。
A 匿名加工情報
匿名加工情報とは、個人情報を加工して、通常人の判断をもって、個人を特定することができず、かつ、加工する前の個人情報へと戻すことができない状態にした情報のことです(改正後2条9項)。
匿名加工情報には、個人情報に関するルールは適用されず、一定の条件の下、本人の同意をとらなくても自由に利活用することができます。
匿名加工情報を取り扱う事業者には、改正後36条~39条により、以下のルールが課されます。
○匿名加工情報を作成する場合(改正後36条)
(ア)適正な加工
(イ)漏えい防止のための安全管理措置
(ウ)匿名加工情報に含まれる情報の項目の公表義務
(エ)加工前の個人情報における本人の特定禁止
(オ)苦情処理等の努力義務
○匿名加工情報を第三者に提供する場合(改正後36条、37条)
(ア)匿名加工情報に含まれる情報の項目と提供の方法の公表
(イ)提供先に対する匿名加工情報であることの明示
○匿名加工情報を第三者から受領した場合(改正後38条、39条)
(ア)加工前の個人情報における本人の特定禁止
(イ)加工方法の取得禁止
(ウ)苦情処理等の努力義務
B 個人情報保護指針
個人情報保護方針とは、認定個人情報保護団体(事業者の個人情報の適切な取扱いの確保を目的として国の認定を受けた民間団体)が、安全管理措置や匿名加工情報の作成方法等、法律に定められた義務に関して業界の特性に応じた具体的な履行方法等を定める自主的なルールのことです。
今回の改正において、認定個人情報保護団体が個人情報保護指針を作成する際には、消費者や有識者の意見を聴きながら作成するように努め、作成後は、個人情報保護委員会に届け出て、個人情報保護委員会はその内容を公表することになりました。そして、個人情報保護指針が公表されたときは、認定個人情報保護団体は、対象事業者に対し、指針を順守させるため必要な指導、勧告その他の措置をとることになっています。
C 利用目的の変更要件の緩和
事業者は、個人情報の利用目的をできる限り特定し(15条1項)その特定した利用目的の範囲内で個人情報を取り扱わなければなりません。その目的の範囲を超えて取り扱う場合には、あらかじめ本人の同意を得る必要があります(16条1項)。
利用目的の変更については、改正前においては、「変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲」において認められていました。平成27年改正により、「変更前の利用目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲」において認められることとなり、変更の要件が緩和されました(改正後15条2項)。
なお、利用目的を変更した場合、本人へ通知、又は公表する必要があります。
今回のメルマガ②【2016年10月号】消費者裁判手続特例法施行
2.「消費者裁判手続特例法施行」
平成28年10月1日に、「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」(平成25年12月11日公布。以下、「法」といいます。)が、施行されました。「日本版クラスアクション」とも呼ばれる同制度は、第一段階において、事業者の共通義務を確認し、第二段階において、対象消費者の債権を個別に確定する流れを予定しています。
今回は、第一段階の共通義務確認訴訟について、原告、被告、対象となる請求債権等についてご紹介します。
ア 原告(法3条1項)
共通義務確認訴訟の原告は、内閣総理大臣の認定を受けた「特定適格消費者団体」に限られています。
イ 被告(法3条3項)
共通義務確認訴訟の被告は、対象となる請求が消費者契約に関するものに限定されていることから、基本的には、「消費者契約の相手方である事業者」とされています。ただし、被害回復の実効性を確保する観点から、不法行為に基づく損害賠償請求については、履行事業者、勧誘事業者も被告に加えられています。
ウ 対象となる請求債権(法3条1項)
消費者、事業者の予測可能性を高め、審理の複雑化、長期化を避ける観点から、制度の対象となる請求が列挙されています。
制度の対象となる請求としては、
(ア)金銭の支払いを目的とする請求であること
(イ)消費者契約に関する請求であること
(ウ)次のいずれかの請求であること
A 契約上の債務の履行の請求
B 不当利得に係る請求
C 契約上の債務の不履行による損害賠償
D 瑕疵担保責任に基づく損害賠償の請求
E 不法行為に基づく民法の規定による損害賠償の請求
が必要です。
また、損害の範囲として、拡大損害、人身損害、逸失利益、慰謝料等については本制度を利用した請求をすることはできません(法3条2項)。これらの損害は、因果関係、損害の認定において、個別的な事情を考慮する必要があり、類型的に判断をすることが難しいことから対象外とされています。ただし、消費者は、対象外とされた損害について、自ら別訴を提起することは可能です。