多湖・岩田・田村法律事務所【企業法務部門】は、東京都千代田区の企業法務を中心業務とした法律事務所です。

メルマガ2016年12月号

メルマガ【2016年12月号】目次

メルマガ①【2016年12月号】個人情報保護法改正(その4)

①個人情報保護法改正(その4)

社会福祉法の改正について(その2)

相続(その1)

平成27年9月に個人情報保護法が改正されました。主な改正のポイントは次のとおりです。

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ア 定義の明確化等

イ 適切な規律の下で個人情報等の有用性を確保

ウ 個人情報の流通の適正さを確保

エ 個人情報保護委員会の新設及びその権限

オ 個人情報の取扱いのグローバル化

カ 請求権

(首相官邸ホームページhttp://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pd/pdf/gaiyou.pdf

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個人情報保護法改正の重要なポイントのうち、今回は、「エ 個人情報保護委員会の新設及びその権限」についてご紹介します。

 

A 個人情報保護委員会とは

個人情報保護委員会は、内閣府設置法第49条第3項の規定に基づいて設置された内閣総理大臣の所轄に属する委員会です(改正後59条)。

平成28年1月1日から個人情報保護法は個人情報保護委員会が所管しています。改正前の個人情報保護法では、事業分野ごとに担当大臣が事業者を監督していますが、改正後は、事業者の監督権限が個人情報保護委員会に一元化されます(一元化されるのは、改正個人情報保護法の全面施行の日からとなります。)。

                                 

B 事業者に対する監督権限

個人情報保護委員会は、個人情報取扱事業者又は匿名加工情報取扱事業者(以下、「個人情報取扱事業者等」といいます。)に対し、報告若しくは資料の提出の要求、立入検査、指導、助言、勧告、及び命令を行うことができます(改正後40条から42条)。

ただし、個人情報保護委員会は、これらの権限の行使により、表現の自由等を妨げてはなりません(改正後43条1項)。

 

C 経過措置

個人情報保護法附則(平成二七年九月九日法律第六五号)(以下、「附則」といいます。)には、監督権限の一元化などを含む経過措置が規定されています。

例えば、附則第4条1項には、施行日前に主務大臣がした一定の勧告、命令その他の処分又は通知その他の行為が、施行日以後は、個人情報保護委員会がした勧告、命令その他の処分又は通知その他の行為とみなされる旨が規定されています。

メルマガ②【2016年12月号】社会福祉法の改正について(その2)

A はじめに

平成28年3月31日、社会福祉法等の一部を改正する法律が成立しました。主な改正のポイントは次のとおりです。

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ア 経営組織のガバナンスの強化

イ 事業運営の透明性の向上

ウ 財務規律の強化

エ 地域における公益的な取組を実施する責務

オ 行政の関与の在り方

カ 福祉人材の確保の促進

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前回(9月号)は、「ア 経営組織のガバナンスの強化」のテーマから、評議員会に関する事項をご紹介しました。今回は、「ア 経営組織のガバナンスの強化」のテーマから、会計監査人に関する事項をご紹介します。

 

B 会計監査人の設置義務

改正後の社会福祉法(以下、「改正法」といいます。)では、「特定社会福祉法人」(事業の規模が政令で定める基準を超える社会福祉法人)において、会計監査人の設置が義務付けられました(改正法第37条)。

厚生労働省作成の平成28年11月11日付け「社会福祉法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等及び経過措置に関する政令等の公布について(通知)」によると、特定社会福祉法人の対象範囲について、

 平成29年度、平成30年度は、収益30億円を超える法人又は負債60億円を超える法人(改正法施行令13条の3)

 平成31年度、平成32年度は、収益20億円を超える法人又は負債40億円を超える法人

 平成33年度以降は、収益10億円を超える法人又は負債20億円を超える法人

と段階的に対象範囲を拡大していくことを予定しているようです。

 

設置義務基準に該当することが見込まれる法人については、今回の法改正に係る平成28年度中の定款変更の際に会計監査人に係る条項についても定め、定款変更申請を行う必要があるので、ご注意ください。

もっとも、会計監査人の設置義務基準に該当するか否かが平成28会計年度の決算が確定するまで判断できない法人については、平成29年度の定時評議員会において、会計監査人選任とあわせて、会計監査人に係る定款変更を議決後、定款変更申請を行うことが可能です。

 

C 監査対象と監査開始年度

会計監査人は、社会福祉法人の計算書類及びその附属明細書、並びに財産目録を監査し、会計監査報告を作成しなければなりません(改正法第45条の19第1項、2項。改正法施行規則2条の22)。

なお、会計監査人の設置義務は、平成29年4月1日以降最初に招集される定時評議員会の終結の時から適用されますので、会計監査人による監査は平成29年度決算から必要であり、平成28年度決算については、監査不要です。

 

D 会計監査人非設置法人における会計に関する専門家の活用

厚生労働省は、会計監査人を設置しない法人においては、財務会計に関する内部統制の向上に対する支援又は財務会計に関する事務処理体制の向上に対する支援について、法人の事業規模や財務会計に係る事務態勢等に即して、公認会計士、監査法人、税理士又は税理士法人を活用することが望ましい旨をコメントしています。

 

E 社会福祉法改正に関するブログ

当事務所は、下記のブログにて、改正法に関する情報発信もしていますので、宜しければこちらもご参照ください。

http://ameblo.jp/shakai-fukushi-houjin

 

 

メルマガ③【2016年12月号】相続(その1)

A 預金債権が遺産分割の対象となるのか

最高裁は、「相続人数人ある場合において、その相続財産中に金銭その他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解するを相当とする」と判断し(最高裁昭和29年4月8日判決)、それ以降、可分債権である預金債権も相続とともに各相続人に当然分割されると解されてきました。

これに対し、銀行実務は、相続人に対し、相続人全員の実印が押印された相続人全員の同意書又は遺産分割協議書、並びに相続人全員の印鑑証明書などの提出を要求しており、単独の相続人から銀行に対する預金債権の相続分の払戻しを認めないケースが多いようです。

このように、預金債権の扱いについて、判例と銀行実務との間に齟齬がありました。

 

この点、預金債権約3800万円について、遺産分割の対象となるか否かという点が争われた審判事件が、平成28年3月23日に最高裁の大法廷に回付され、平成28年10月19日には大法廷で弁論が開かれました。

最高裁には小法廷と大法廷がありますが、「憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき」は、小法廷で裁判がすることができません(裁判所法第10条3号)。すなわち、事件が大法廷に回付されるということは、裁判所が、判例を変更する可能性があるのです。

 

仮に、判例が変更された場合、その内容次第では、相続実務及び銀行実務には多大な影響が出ることになります。

報道によれば、年内にも、最高裁大法廷が決定を下す可能性があるようで、その判断が待たれます。

 

 

B 相続における保険金請求権の扱いについて

被相続人が自らを被保険者とし、特定の相続人を受取人とする生命保険契約を締結した場合、被相続人が死亡したことにより発生した保険金請求権が相続財産(遺産)になるのかという論点があります。

この点、最高裁は、養老保険(生命保険の一種)の保険金請求権について、相続人の固有財産である旨を判断した大審院の立場を踏襲しましたが(最高裁昭和40年2月2日判決)、その後、一定の場合に、民法903条の類推適用により、保険金請求権を特別受益に準じて、持戻しの対象となることを認めました(最高裁平成16年10月29日決定)。

 

<参考>

① 民法903条1項

共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

② 最高裁平成16年10月29日決定

「もっとも,上記死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は,被相続人が生前保険者に支払ったものであり,保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。」

 

それではどのような場合に、民法903条が類推適用されるのでしょうか。

裁判例では、類推適用を認めたものとして、①遺産の総額に匹敵する保険金(1億円余)を被相続人の子が受領した事案において、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が本条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであるとしたもの(東京高裁平成17年10月27日決定)、②保険金の比率が遺産の6割に及ぶ事案について類推適用を肯定したもの(名古屋高裁平成18年3月27日決定)があります。

他方で、類推適用を否定したものとして、③保険金額が遺産総額との比率で1割に満たない事案において類推適用を否定したもの(大阪家裁堺支部平成18年3月22日決定)、④保険金の比率が2割6分程度の事案において類推適用を否定したもの(東京地裁平成25年10月9日判決)、⑤保険金及び死亡退職金の合計約5億円が、比較的高額ではありものの、被相続人の遺産総額に対する比率でみれば,過半を占めるようなものではないことを一つの理由に類推適用を否定したもの(東京地裁平成25年10月28日判決)があります。

 

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【コメント】

 

民法903条を類推適用するか否かを検討するにあたってこれらの裁判例によれば、遺産総額との比率で、保険金額が5割程度存在するか否かという点が大きな基準になりそうです。もっとも、保険金請求権の金額のみが考慮要素ではありませんので、個別具体的な検討が必要になります。

この他にも、被相続人が死亡したことにより発生した保険金請求権や、特別受益の扱い等については、難しい論点が複数存在しますので、弁護士に相談した方が良いと考えます。

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