メルマガ【2017年8月号】目次
1 民法改正(その3)法務1-契約不適合責任(瑕疵担保責任)1
改正される民法のうち、今回は「契約不適合責任」についてご紹介します。
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【改正のポイント】
担保責任(その1)についての改正のポイントは、
(1) 瑕疵から契約不適合へ
(2) 契約責任―追完請求
(3) 契約責任―代金減額請求
です。
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(1) 瑕疵から契約不適合へ
現行法上、買主は目的物に隠れた瑕疵があった場合、売主に対し契約解除と損害賠償請求ができるとされています(現行民法570条本文)。
しかし、(a)目的物の特定不特定の区別が時代に合わないこと、(b)契約締結時に過失により瑕疵を知らなかった買主が救済されないのは酷であることが指摘されました。
そこで改正民法562条1項本文は「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる」としました。
これにより、(a)目的物の特定不特定にかかわらず担保責任を追及できることになります。また、瑕疵という用語がなくなり、契約不適合という基準が用いられるようになりました。さらに、(b)契約不適合が「隠れ」ていることは不要となり、契約不適合を知らないことにつき過失があっても担保責任を追及しうることになりました。
法定責任説に基づく瑕疵担保責任を明確に排除し、担保責任一般を契約責任として整理したといえます(改正民法564条参照)。
(2) 契約責任―追完請求
改正民法562条1項の条文は、次の通りです。
「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。」
上記(1)を受け、(不特定物売買はもちろん)特定物売買であっても完全履行請求として追完請求できるようになりました。また、追完の方法については原則として買主が選択できますが、ただし書きに該当する場合は売主が選択できます。
もっとも契約不適合が買主の帰責事由による場合、売主に追完義務を負わせるのは妥当ではないことから、追完請求できないとされました(2項)。
(3) 契約責任―代金減額請求
改正民法563条1項の条文は、次の通りです。
「前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。」
現行民法は数量不足・原始的一部滅失(現行民法565条)、権利の一部が他人に属することによる移転不能の場合(現行民法563条1項)に代金減額請求を認めています。
しかし、売買の対価的均衡を確保するため、本改正では、広く契約不適合の場合、代金減額請求を認めることとしました。同請求は一部解除の性質を持つことから原則催告が必要で、一定の場合にのみ無催告の代金減額請求ができるとされました(改正民法563条1項、2項)。また、代金減額請求の際に、売主の帰責事由は不要です。
なお、追完請求と同様に、契約不適合が買主に帰責事由による場合、売主に対し代金減額請求できないとされました(3項)。