メルマガ【2017年9月号】目次
改正される民法のうち、今回は「契約不適合責任」についてご紹介します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【改正のポイント】
契約不適合責任(その2)についての改正のポイントは、
(4) 契約責任―解除・損害賠償請求
(5) 移転した権利が契約不適合の場合の準用
(6) 契約不適合責任の期間の制限
(7) 競売における契約不適合責任
です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(4) 契約責任―解除・損害賠償請求
改正民法564条の条文は、次の通りです。
「前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。」
改正民法564条の規定は、契約不適合責任に基づき債務不履行責任を追及できることを注意的に規定するものです。
現行民法では、特定物売買において、損害賠償義務は無過失責任でした(現行民法570条本文)が、改正民法では、過失責任となりました(改正民法415条1項ただし書き)。また、現行民法では損害賠償義務は信頼利益のみに限られていましたが、転売利益などの履行利益にまで及ぶことになります。
(5) 移転した権利が契約不適合の場合の準用
改正民法565条の条文は、次の通りです。
「前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。」
改正民法565条の規定により、権利に関しても契約不適合責任を追及することができます。具体例としては、他人物売買や第三者に地上権等の利用権がある場合などが挙げられます。
(6) 契約不適合責任の期間の制限
改正民法566条の条文は、次の通りです。
「売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。」
(ア)改正民法により種類・品質に関する契約不適合の場合、契約不適合責任を追及できる期間が制限されることとなりました。売買での紛争を早期に収束させるためです。特に、種類物売買では買主の権利行使期間が短くなり得るものであり、注意が必要です。
失権回避のためには、不適合を知った時から1年以内に契約不適合の旨を売主に通知すれば足ります。従前の判例の要求(最判平4・10・20民集46巻7号1129頁「売王に対し、具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要がある」)より軽いものとなりました。
(イ)なお、一部他人物売買や数量不足の場合の契約不適合責任には期間制限がなくなり時効に服することとなりました。
(7) 競売における契約不適合責任
現行民法570条ただし書きは強制競売の場合の瑕疵担保責任を否定しています。
改正民法568条4項は、「競売の目的物の種類又は品質に関する不適合」については契約不適合責任が追及できないとしました。このように種類又は品質に関する不適合については、同様の規制が維持されますが、数量不足や権利に関する契約不適合については競売手続にも代金減額請求に関する改正民法563条(565条において準用する場合も含む。)及び解除に関する541条・542条の適用があり(改正民法568条1項)、注意する必要があります。
もっとも、強制競売においては債務者による履行の追完は観念できないことから、追完請求に関する562条の適用はありません(民法(債権関係)部会資料75A、27頁)。