メルマガ【2017年11月号】目次
1 民法改正(その6)法務4 - 消滅時効
改正される民法のうち、今回は「消滅時効」についてご紹介します。
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【改正のポイント】
消滅時効についての改正のポイントは、
(1) 消滅時効の起算点について、主観的起算点の導入
(2) 現行法の職業別の短期消滅時効及び商事消滅時効の廃止
(3)その他の消滅時効
(4)経過措置
です。
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【(1) 消滅時効の起算点について、主観的起算点の導入】
改正民法166条1項は、消滅時効の起算点について、従来の客観的起算点(同項2号)に加え、主観的起算点(同項1号)を導入する旨の規定を新設しました。
現行民法
166条1項
「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。」
167条1項
「債権は10年間行使しないときは、消滅する。」
改正民法166条1項
「債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。」
このような改正により、同項1号または2号のいずれかの期間が経過することにより、時効が完成することになります。「権利を行使することができることを知った時」から5年間の期間が満了する以前に、客観的起算点から10年の期間が経過した場合は、その10年の経過により時効期間が満了します。
例えば、契約に基づいて直ちに発生する債権は、通常、契約者は、契約時に、権利を行使することができることを知るので、同項1号の適用により、5年の消滅時効にかかると考えられます。
【(2) 現行法の職業別の短期消滅時効及び商事消滅時効の廃止】
債権ごとの時効期間の確認の煩雑さを解消するため、改正法では、職業別の区分による短期消滅時効の規定(現行民法170条~174条)、及び商行為によって生じた債権について時効期間を5年とするという商事消滅時効の規定(商法522条)が廃止されました。
これにより、改正民法166条1項に従い、原則として、消滅時効の期間が主観的起算点から5年・客観的起算点から10年に単純化されました。
【(3)その他の消滅時効】
その他、例えば、以下のような消滅時効が存在します。
①生命身体侵害による損害賠償請求権(改正民法167条)について、客観的起算点からの時効期間について、20年とする旨の規定が新設されました(主観的起算点は、5年)。
②不法行為による損害賠償請求権(改正民法724条)について、改正民法では、不法行為の時から20年間の期間制限を(除斥期間ではなく)時効期間であると明示する規定に修正されました(なお、主観的起算点は、3年)。
【(4)経過措置】
附則10条4項は、「施行日前に債権が生じた場合におけるその債権の消滅時効の期間については、なお従前の例による。」と規定されています。そのため、改正法の適用があるのは、施行日後に生じた債権になります。
なお、附則10条1項により、「施行日前に債権が生じた場合」は、「施行日以後に債権が生じた場合であって、その原因である法律行為が施行日前にされたときを含む」とされています。そのため、施行日前に請負契約を締結して、施行日後に報酬債権が発生した場合などは、現行民法の消滅時効の規定に従うことになります。
今回のメルマガ②【2017年11月号】
2 医療機関法務1 - 特定商取引法改正
医療機関法務のうち、今回は、特定商取引法における美容医療契約の追加についてご紹介します。
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【改正のポイント】
特定商取引法における美容医療契約についての改正のポイントは、
(1)新たに特定継続的役務提供の対象となる具体的な役務
(2)概要書面の交付の必要性
です。
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【(1)新たに特定継続的役務提供の対象となる具体的な役務】
これまで、特定商取引法は、特定継続的役務提供として、いわゆるエステティック、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスを、その対象としてきました。
しかし、近年、美容医療サービスに関する消費者相談が増加傾向にあることから、平成28年改正特定商取引法(以下、「改正法」といいます。)は、1ヶ月を超えて継続して行われる美容医療サービスのうち以下のものを新たに特定継続的役務提供の対象に追加しました(平成28年改正特定商取引法施行令(以下、「改正施行令」といいます。)別表第四の二、平成28年改正特定商取引法施行規則(以下、「改正施行規則」といいます。)31条の4)。
なお、施行日は平成29年12月1日です。
ア 脱毛 光の照射又は針を通じて電気を流すことによる方法
イ にきび、しみ、そばかす、ほくろ、入れ墨その他の皮膚に付着しているものの除去又は皮膚の活性化 光若しくは音波の照射、薬剤の使用又は機器を用いた刺激による方法
ウ 皮膚のしわ又はたるみの症状の軽減 薬剤の使用又は糸の挿入による方法
エ 脂肪の減少 光若しくは音波の照射、薬剤の使用又は機器を用いた刺激による方法
オ 歯牙の漂白 歯牙の漂白剤の塗布による方法
今回の改正により、美容医療サービスのうち上記アからオは特定継続的役務提供の対象となるため、改正施行令が規定する提供期間(1ヶ月超)・金額(5万円超)等の条件を満たす場合には、改正法による種々の規制の対象となります。
例えば、消費者などの特定継続的役務提供受領者等(改正法46条1項)は、特定継続的役務提供契約の内容を明らかにする書面(以下、「契約書面」といいます。)を受領した日から起算して8日が経過する以前であれば、締結した契約を書面により解除等することができます(いわゆるクーリング・オフ。改正法48条)。
なお、契約書面を受領した日から起算して8日が経過した後でも、契約を将来に向かって解除することは可能です(改正法49条)。
その他にも、誇大広告等の禁止(改正法43条)、勧誘時及び解除時の禁止行為(改正法44条)、書類の備付け及び閲覧(改正法45条)などの規制の対象となり得ます。
【(2)概要書面の交付の必要性】
特定継続的役務提供等契約を締結しようとする場合、役務提供事業者又は販売業者は、契約締結時までに特定継続的役務提供契約の概要について記載した書面(以下、「概要書面」といいます。改正法施行規則32条1項)を、特定継続的役務の提供を受けようとする者又は提供を受ける権利を購入しようとする者に交付する必要があります(改正法42条1項)。
概要書面を交付せずに特定継続的役務提供等契約を締結する場合、役務提供事業者又は販売業者は、主務大臣の指示(改正法46条)及び業務停止命令(改正法47条)の対象となり得ます。
また、書面の不交付等は罰則の対象となり、6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はその両方に処されます(改正法71条1項1号)。
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