メルマガ【2018年1月号】目次
1 民法改正(その7)法務5 - 法定利率
改正される民法のうち,今回は「法定利率」についてご紹介します。
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【改正のポイント】
法定利率についての改正のポイントは、
(1)法定利率の引き下げ及び変動制の導入
(2)法定利率の基準時の明記
です。
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【(1)法定利率の引き下げ及び変動制の導入】
(ア)内容
法定利率について、改正される民法の条文は次の通りです。
改正民法404条
「1 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による 。
2 法定利率は、年三パーセントとする。
3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
5 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を六十で除して計算した割合(その割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。」
1 経済変動により低金利が続いているため、現在5%とされている法定利率を、3%に引き下げます。
2 現在6%とされている商事法定利率(現行商法514条)を廃止し、改正民法の法定利率に統一します。
3 法定利率を3年毎に見直し、変動させます(変動しないことも有ります)。
(イ)対応策
改正民法404条は任意規定ですので、当事者の合意によって法定利率と異なる利率を定めることが可能です(その場合の利率の上限は、利息制限法などで定められています。)。
上記改正により不利益を被る会社(法人)の場合、契約書で任意の利率を定めることが考えられます。
【(2)法定利率の基準時の明記】
1 法定利率の基準時
法定利率は3年毎に変動しますが、改正民法は、住宅ローンの金利でみられるような「変動金利」を採用するものではありません。改正民法404条1項によると、利率は「その利息が生じた最初の時点」で固定されるため、法律上の法定利率が3年に1度変動しても、個別の契約における利息が生じた最初の時点での法定利率は変動しないことになります。
2 法定利率の基準時(いわゆる「遅延利息」の場合)
(ア)内容
いわゆる「遅延利息」について、改正民法419条1項は、次の通り定めています。
改正民法419条
「1 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅延の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超える時は、約定利率による。」
金銭の給付を目的とする債務の不履行について、その損害賠償の額が法定利率によって定められるということは、現行民法と変わりません。
改正民法は、その基準時を、債務者が遅延の責任を負った最初の時点における法定利率と定めました。
そのため、例えば、契約締結時の法定利率が3パーセントでも、履行期までの間に法定利率が見直され4パーセントになった場合には、履行遅滞により発生する損害賠償(遅延利息)の額は4パーセントになります。このように、契約当初に予想した損害賠償の額が変動することがあります。
(イ)対応策
損害賠償の額が変動することを避けるためには、あらかじめ契約の不履行の場合の損害賠償(遅延利息)の利率の合意をしておくことが考えられます(なお、その場合の利率の上限は、利息制限法や消費者契約法などで定められています。)。